こんな方におすすめ
・爽快な読後感の本を求めている方
おすすめの理由
この物語は、ハードボイルド(⁉)をこよなく愛する小説家が主人公になります。
彼は、2年前の交通事故が原因で、朝になると昨日の記憶が無くなってしまう病気、前向性健忘になってしまいました。
主人公が重い病気の物語だと、読んでいる自分自身もつらくなってしまうことがあります。
ところが、今回の物語はさっぱりと読み終えることができました。
主人公のハードボイルド(⁉)なキャラクターと、周囲の理解のあるメンバーのおかげで悲壮感はほとんどありません。
感動もするけど、前向きな気持ちにもなれる。そんな物語です。
また、後半で一気に伏線が回収されるので、きっと2周目を読んでみたくなると思います!
あらすじ
ある朝、自分のアパートで目覚めた主人公の岸本アキラは違和感に気が付きます。
昨日の夜の記憶では、自分のアパートで寝ているはずがないのです。
違和感を覚えつつもとりあえず洗面台に向かったところ、鏡にはパソコンの中身を見るようにという赤い文字。
パソコンには、過去の自分からの衝撃のメッセージファイルがありました。
絶望的な状況の中、アキラは持ち前のハードボイルドさで困難に立ち向かいます。
主な登場人物
岸本アキラ
物語の主人公。小説家で、ペンネームは岸本瑛。2年前の交通事故の影響で、朝には昨日の記憶が消えてしまうという前向性健忘になってしまう。
岸本日向
アキラの妹で、20歳の大学生。毎週木曜日にアキラの家にきて、身の回りのことを手伝ってくれている。
修
アキラとの大学時代からの友人。東大の研究室に在籍している理論物理学者で、爽やかイケメン。
翼
アキラの行きつけのカフェ、『ボーディーズ』の店員。カフェで働きながら、パティシエールとして修業している。
努力の証
俺は基本的になんらかのスキルを持っている人間を尊敬している。それは努力の証だからだ。
俺は鍛え上げた人間の身体能力とか技術を見ることそのものが好きなんだよ。あんなことできるほど頑張ってるとか、シンプルにすげぇだろ。
両方とも、主人公のアキラの言葉なのですが、この考え方は好きだなと思いました。
世の中には、こういった努力の証を見ても、なにも感じないひともいるし、練習しているのだからできて当たり前でしょ?という考え方のひともいます。
作中のアキラはかっこつけで、キザなセリフばかりな人物です。ただ、こういう考え方を持っていたり、絶望的な状況でも何度も立ち上がる姿には尊敬できるところが沢山あるなと感じました。
全体の感想
今回紹介した「僕は僕の書いた小説を知らない」は、喜友名トト先生の作品です。
私は喜友名トト先生の作品を初めて読んだのですが、とても読みやすい文体だなと感じました。
感動を誘う作品というのは、主人公や、主人公に近いひとが病気や事故で亡くなることが多いし、読んでいる自分自身も辛くなることがあります。
ところが、この作品では病気が原因でつらい状況にある主人公がとても強く、前向きだったため、悲壮感をあまり感じませんでした。
読後感もさっぱりとした感覚でしたので、読んで良かったなと思いました。
また、後半で一気に伏線が回収されて驚きましたし、最後のセリフにも痺れました!
私はついつい2周目を読んでしまったのですが、皆さんもきっと同じように2周目を読んでしまうと思います。おすすめの作品ですので、ぜひ手に取ってみてください!